522号(20年2月)

特集 各地域のお正月風景

 各県より届いた令和最初のお正月風景をご紹介します。特色ある伝統行事、習慣や料理など地方ならではのお正月風景が楽しめます。

山形県
「初市(はついち)」

山形県婦人連盟 小座間則子

豊作を願う団子木

 初市は最上義光公治世の当時、山形には定期の市が立つ市日町があり、それらの市の中心として十日町に「市神(いちがみ)」が祀られました。
 毎年1月10日に市神祭りとして、縁起物をはじめ様々なものを売る多くの露店が立ち並ぶようになったのが始まりと言われています。
 江戸時代初期から続く伝統行事で、商業の株を象徴しての「かぶ」、長寿を表す「白ひげ」等の野菜、初あめ、団子木、船せんべい、だるま等の縁起物や臼、杵、まな板等の木工品、家庭用品等の露店が今年も250軒立ち並びました。

群馬県
「鳥追い祭り」

群馬県地域婦人団体連合会 会長 関 マツ

 吾妻郡中之条町の鳥追い祭りは、慶長四年、1604年に始まったとされる400年以上の歴史をもつ祭りです。田畑の作物を荒らす鳥獣を太鼓を叩いて追い払い、五穀豊穣を願うための行事で、農事の正月と言われる小正月の前日である一月十四日に「どんど焼き」に引き続きこの祭りが行われています。
 はっぴを着た町の若衆が「追いもうせ、追いもうせ、唐土の鳥を追いもうせ、サーラバよって追いもうせ」と言うかけ声のもとに大小11個の太鼓をいっせいに打ち鳴らし、町中を練り歩きます。この太鼓の音は周囲数キロにも及び、原初の人々の熱い思いが腹の底から突き上げてくるような気がします。太鼓は一番大きいのが直径103pもあり、県指定重要有形民俗文化財に、鳥追い祭りは県指定無形民俗文化財に指定されています。
 同時に行われる福みかん投げも有名。当たりくじもあり毎年大勢の人手で賑わいます。

どんど焼きは無病息災を祈る冬の民俗行事
鳥居に据えられた茅の輪

新潟県
「どんど焼き」

新潟県婦人連盟

 あちらこちらで見られる小正月の行事「どんど焼き」。新潟では、真っ白な雪の中、広〜い田んぼで、正月飾りや書初め、お守り、だるまなどが勢いよく燃える周りで、たくさんの人が談笑する姿が一般的ですが、今年は雪なしです。もちろん、無病息災祈願。この火で焼いたするめを食べると「風をひかない」と言われています。

「茅の輪くぐり」
 上越市北城地区の「茅の輪くぐり」。心身を清めて、無病息災を祈願します。

「のっぺ」

 そして、正月に欠かせないのが「のっぺ」。“それぞれの家庭の味”で、どこの家庭でも必ず作るものです。
 「のっぺ」の作り方を下に記しますので参考にして下さい。
【材料】
里芋、人参、こんにゃく、干し椎茸、鶏もも肉、かまぼこ、竹の子の水煮、鮭。ゆり根、銀杏、絹さや、イクラ。
【調味料】

干し椎茸の戻し汁、みりん、酒、薄口しょうゆ、(貝柱缶のだし)など。
【作り方】
 材料は拍子木切り。ゆっくりコトコト煮る。ゆり根や銀杏は火を止める直前に入れる。椀に盛り、さっと茹で半分に斜め切りにしておいた絹さやとイクラを散らして出来上がり。

富山県
「天神様」

富山県婦人会

床の間に飾られた天神様

 富山県では、お正月に各家庭で天神様を飾ります。この天神様は、長男が生まれると、賢く丈夫に育つようにとの願いを込め、母親の実家から贈られるものですが、近年では長男に限らなくなっているようです。福井藩に伝わる行事を富山の売薬商人が伝えたという説や加賀藩から伝わったという説もありますが、12月25日に掛け軸、木彫りの座像、土人形の天神様などを床の間に飾り、お正月には、お神酒、鏡餅や雑煮を供えお参りをします。
 天神様はお酒が好物とかで、一升瓶を飾るところもあるようです。また、天神様の前で書初めをすると字が上手になると言われ、近所の天満宮や家庭の天神様の前で書初めをしたという人もあります。
 1月25日には天神様がお帰りになります。地域や家庭により違いがありますが、鯛等尾頭付きの魚や蟹を供えたり、仕出し料理や小豆粥を供えたりして、丁重にお送りします。この頃になると、店頭に蟹や鯛が並べられるのも季節を感じさせる風景です。

南砺市
「つじうら」

つじうら飴で運だめし
 県西部の南砺市では、お正月に「つじうら飴」で1年を占います。1月2日の朝に、つじうら飴を3個とり、中に入っている札と初夢を合わせて占います。明治生まれのお祖父さんからの教えとして今もしっかりと守っている家庭もあります。例えば、「今夜のたのしみ」「あなたがたよりなの」「ライバル現る」など意味深な文句は今も昔も変わらないそうです。
 今年は県婦人会の新年初会でも、つじうらの楽しみを経験しました。「七転び八起き」「あきらめなさい」など、引いたくじに一喜一憂。大いに盛り上がりました。今年も良い1年になりますように。


鳥取県
「酒津(さけのつ)のトンドウ」

鳥取県連合婦人会

トンドウのまわりを走る子どもたち©鳥取県

 国指定重要無形民俗文化財に指定(平成19年3月7日)された左義長行事「酒津トンドウ」。無病息災や豊漁を願っての正月行事で、130年以上の歴史があります。
 2屯トラック約2台分の藁を準備。漁港に高さ4〜5mの松を中心に12本の孟宗竹を斜めに立てかけ、円錐形のトンドウを作ります。その先端に鯛と扇子を取り付け、ミノグミのシメ縄を3重に巻きます。裾の直径は4mに。各家庭の正月飾りを付けます。
 行事の主役は全員が小学生の男子。頭送り(6年生)は顧問格で、一番頭(5年生)が実際の指揮をとります。裸足に上半身裸でパンツ1枚の子どもたちは海水で身を清め、海で拾った海藻のモクを手に「ワッショイワッショイ」とグルグル振り回しながらトンドウを3周します。そして全世帯を回り「ハライタマエ・キヨメタマエ」と口々に唱えて「垢離(こり)」の礼儀を行います。
 翌朝、午前1時、「1番オタキダデー、トンドトンド」と威勢よくふれ歩き、3番オタキで村人は浜に出ます。「トンドウに火を入れテーナ、トンドトンド」とふれると区長が火入れ、夜空を焦がして火柱が上がります。
 地域の団結力で伝統行事を守り、若い世代に受け継がれていく素晴らしい絆です。

徳島県
「鴨島地区のお正月」

徳島県婦人団体連合会 副会長 喜島 寧子

手作りのしめ縄
心まで温まるぜんざい

 私の住む徳島県吉野川市鴨島町は、人口約4万人の町。鴨島地区では、八幡神社・若宮神社・杉之尾神社の3か所の神社で12月に入るとすぐにそれぞれに神社のしめ縄作りが始まります。稲藁で神社の総代、とうやの方々が寄り集まって何日もかけてしめ縄を作ります。これが大変な作業です。
 12月31日には午後10時から集まり、参拝に来ていただいた氏子たちに振る舞うぜんざいの準備をします。総代、とうやは、除夜の鐘が鳴ると同時に氏子の皆様にぜんざいを食べていただきます。
 当日は250人くらいの人が訪れます。神社の中では餅を焼き、屋台で作ったぜんざいを次々に食べていただきます。寒さもあり、皆さんが「おいしい、おいしい」と喜んでくれます。
 私は、神社総代を17年しており、とともに17年間毎年小豆を焚かせてもらっています。雪の降る年があったり、風の強い年もあったり。それでもぜんざいを食べに来てくださる方を見ると、今年も元気にぜんざいを作ることができてよかったと、最高の新年を迎えられることに幸福を感じています。

→地域社会