516号(19年8月)

第50回北方領土復帰促進婦人・青年交流集会

北方領土の現状と国民運動の役割
―返還へ世代を超えてつなぐ声―


岩田会長
集会記念撮影(ニ・ホ・ロ)
歯舞漁協見学
北方領土を望む納沙布岬にて
 7月12日から15日まで、「根室の歴史と自然をよく知ろう」のテーマで北海道根室市を中心に3泊4日の研修が行われました。
 13日午前、歯舞漁業協同組合を訪問し、早煮昆布の袋詰め作業を見学しました。
 交流集会に先だち、日本青年団協議会との夕食会で、中田和子北海道会長から「納沙布岬には沖縄の波照間島で採火した『祈りの火』が青年団のリレーにより運ばれ、燃え続けている」と紹介され、青年団との長い運動の歴史を感じました。
 14日は、根室市の北海道立北方四島交流センター(ニ・ホ・ロ)において、第50回北方領土復帰促進婦人・青年交流集会が開催されました。全地婦連から54人、日本青年団協議会から25人、千島連盟から11人の総勢90人が参加しました。
 開会式では、主催者挨拶として、日本青年団協議会福永晃仁会長が、「50回まで続いたことは記念でも、喜ばしいことでもない、この間社会情勢、地域のあり方も変わってきている、これからこの運動をどうしていくかが問われている」と話されました。
 次に北海道北方領土対策根室地域本部東田俊和副本部長が手話で自己紹介、ご挨拶のあと、石垣雅敏根室市長が、「根室はアイヌ語で『樹木が繁茂する地』の意で、テニスの大坂なおみさんの祖父が歯舞群島の勇留島出身でなおみさんは島民三世になる。平成当初、経済支援を軸にロシアと交渉が出来たが、最近は経済だけでは難しくなっている」などと話されました。
 引き続き、石垣市長に参加者から集めた「祈りの火」募金28、470円をお贈りしました。

 基調講演は元NHK解説委員の山内聡彦氏の講演。引き続き、多楽島出身の河田弘登志氏さんからのお話、二世三世の青少年との交流を行いました。
 集会を振り返って全地婦連岩田繁子会長は、「現状を知る、歴史を知る、戦争の悲惨さを語り継ぐ、また私たち婦人会は、歯舞昆布を広めて食卓から北方領土問題について考える機会にする。この領土問題の交渉は国にしか出来ないから、私たちはその後押しとして、みんなで手を取り合って、がんばって続けて参りましょう」と力強く結ばれました。
 終わりに全地婦連大友富子副会長から「私たちの決意」が発表され、集会を閉じました。


【基調講演】「北方領土の現状と、国民運動の役割」
 元NHK解説委員 山内聡彦氏


 2012年にプーチン政権、安倍政権が発足し、それ以来26回もの首脳会談が行われており、昨年11月に安倍首相から新しく「1956年の日ソ共同宣言を基礎」とした領土交渉を提案。この日ソ共同宣言とは、当時の総理大臣鳩山一郎氏が訪ソした折に調印した「ソ連は平和条約締結後に歯舞、色丹を引渡す」とした共同宣言のことで、その宣言には国後、択捉の引渡しについての言及はないが、両国ともに認める唯一の領土問題で批された公式文書のことである。
 昨年の安倍首相の提案はこれまでの四島返還から「二島返還+α」に大きく舵を切るものであり、失敗すれば二島すら返還されないことになるリスクの大きい提案である。
 では、なぜ四島返還から「二島返還+α」に安倍首相は変えたか。それはロシアが国後・択捉の帰属協議には一貫して応じないからであり、双方が受け入れられる解決策は、プーチン大統領が唯一有効性を認めている二島引渡しを定めた1956年宣言であるからで、この決断の背景には「自分の任期中に問題に終止符を打つ」との安倍首相の強い思いと「プーチン大統領との信頼関係を生かせるタイミングは今しかない」ということにある。
 これまで領土交渉には3回のチャンスがあった。1度目は1992年、ソ連崩壊の直後、ソ連から「二島返還、他の二島については継続協議」とする提案をされたとき、日本が四島返還にこだわり拒否。2度目は1997年、日本からの提案「二〇〇〇年までに平和条約調印に全力で臨みウルップ島と択捉島の間に国境線、四島の主権を認めれば返還の時期には柔軟に対応する」というものに対してロシアが拒否。3度目は2000年、プーチン大統領の訪日の際、1956年の日ソ共同宣言の有効性を認め、その翌年のイルクーツク首脳会談で日本側から「歯舞、色丹は返還協議、国後、択捉は帰属協議」とする並行協議を提案した時だった。両国ともに長期安定政権である今が4度目の大きなチャンスである。
 今年1月から6月に、首脳会談1回、外相会談4回、外務次官級協議7回と交渉を重ねているが、ロシアは予想外に強硬姿勢であり協議は難航、長期化は必至の状況である。
 6月末に大阪で行われたG20での合意内容は、試験的な観光ツアー、ごみ処理専門家の往来などの共同経済活動、また北極圏のLNG開発事業など経済協力であったが、その合意についてもどちらの法律に基づいて行うか合意が難しく、また合意内容に領土問題について何の成果もなかったことなど日本の思惑が大きく外れた結果になった。
 基本的には安倍首相のこのやり方は間違っていないと思っているが、ロシアの国内事情として、ナショナリズムの台頭、年金受給年齢や付加価値税の引上げに国民の反発があるなど難しい状況である。
 では、ロシアは領土交渉には一切応じないかというと、対中国、対ノルウェーに於いては領土問題を解決した実績もある。日本としては経済協力などでよい雰囲気づくりをし、交渉進展のチャンスを待つ。交渉を進めるには両国に強力な指導者がいることであり、両首脳のような関係を築くのは容易ではないから、安倍首相は四選を目指して更に交渉を進める。また、一旦二島返還を持ち出したから、今後は二島返還で交渉を進めるしかなく、今後はロシア国民の理解をどう得るかも課題である。
 貿易、経済、観光などを通じてロシアとの関係全体の底上げをはかり、経済協力の実行、共同経済活動の拡大、ビザ無し交流の継続などでロシア国民とより分かり合うこと、その為には個人的な友達づくりなども大切である。

→北方領土問題