503号(18年7月)

2018年PLオンブズ会議報告会「自動運転の現状と未来」

 今年のPLオンブズ会議報告会は、7月2日に東京・四谷の主婦会館プラザエフで開催され73人が参加しました。テーマは「車の自動運転ってどこまで安全なの?〜自動運転の現状と未来〜」です。

第1部 報告

渡邊諒さん 2018年PLオンブズ会議=左から
伊藤崇、三浦静止、新美育文、辰巳菊子の皆さん
国土交通省のホームページから

先進安全自動車に関する消費者の使用実態調査結果
国民生活センター商品テスト部・渡邊諒さん

 PIO―NETへ先進安全自動車に関する相談が年々増加傾向にあること、中でも衝突被害軽減ブレーキに関する相談が8割もあることから、調査を行いました。調査結果から、消費者へ「衝突被害軽減ブレーキはあらゆる状況での衝突を防ぐ装置ではない、ブレーキが作動しないなど機能には限界があること、機能を過信せず安全運転を心がけてほしい」などと助言しました。
 業界へは、各社で先進安全装置の名称が異なっているため、機能について消費者へ分かりやすい説明をすることなどを要望しました。

安全運転支援システムの現状
技術コンサルタント・三浦静止さん

 安全運転支援システムの各社の性能水準は、ほぼ横並びです。しかし、どこまで精密に消費者へ伝えているかというと、各社で違っています。
 消費者によく理解してほしいのは、現状の水準では各社の安全運転支援システムは、いずれも道路状況や天候、車両状態等によっては作動しない場合や十分に性能を発揮できない場合があることです。免責事項があるということは、運転手に責任が生じるということであり、説明を聞かなかったからといってメーカーが悪いということにはならないと考えます。
 今後自動運転のあるべき姿は、当面は安全運転システムで、ドライバーとシステムの双方で事故を減らすこと。自動運転に関する法律などが整備され、対応した保険商品も出てくれば、残るのは倫理問題だけで、完全自動運転になれば、事故は10分の1以下が予測され、明らかに減少します。事故が10分の1でよいという「確率」を、世間が受容していくのを待つ必要があると考えます。

自動走行の民事上の責任及び社会受容性に関する研究
明治大学法学部教授・新美育文さん

 法律的観点から安全でなかった場合、どう対応するべきか、どんな責任があるのか。刑事責任・民事責任・取締法規による行政責任の3点の対応があります。民事責任とは「発生してしまった」損害をどうやって救済するかということだけです。
 現行法上では、部分的には、運転者と車の所有者は「自賠法」、製造者・ソフトウエア作成者は製造物責任法(PL法)、インフラは国家賠償法や民法上の土地工作物責任とういう法が当てはまります。
 これらの法で被害者救済になるかというと、PL法や国家賠償法などは欠陥の立証が必要になるので、自動走行の車両に欠陥があったことを立証するのは事実上不可能です。自賠法は自分に過失がないこと、第三者に過失があること、自動車の構造・機能に欠陥がなかったという3つのことを立証しないと責任は問えません。
 レベル5で、自動車の運行管理、運行支配・運行利益は誰にあるのか。自賠法のままで被害者救済ができるのかは、慎重に議論が必要となってきます。また、レベル5になると車両価格も高額になると思われ、車の個人所有は難しくなると予想されます。カーシェアリングのような場合、現状の保険システムが機能するのかという点が課題となります。
 自賠責の対象から外れる物損についても、被害救済について、PL法での被害救済は「欠陥」の立証困難性から極めて難しいと思います。

第2部 パネルディスカッション

クルマの自動運転ってどこまで安全なの?

 三浦静止さん、新美育文さん、辰巳菊子さん(日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会)、コーディネーター=伊藤崇さん(弁護士・PLオンブズ会議メンバー)

レベル2について

 三浦さんから、保険会社のアンケートでは、運転支援技術搭載の車は現在普及しているのは走っている車の約8%、新車販売の50%を超えて急速に普及していると紹介がありました。
 辰巳さんからは、「消費者の相談として、『自動運転』という言葉は非常に普及しているが、『自動運転』が何を指すか理解されていない。メーカーごとに名称が違い分かりにくい、購入時の定義や概念の説明がない、車に過大な期待をしてしまう」と発言がありました。
 新美さんは、消費者問題として「支援技術が搭載された車を購入するときに、どれだけの情報提供がなされているかが挙げられる。しかしこれも免責事項やマニュアルに書かれているため、法的に説明がなかったといえるかは難しいのではないか」と説明されました。

レベル4に向けた実証実験

 伊藤さんから、今年3月、アメリカで自動走行実証実験中の車が、飛び出してきた歩行者がいることを判断はしたがブレーキを作動させる仕組みではなく、死亡事故になりました。その際、運転者は、ハンドルから手放ししていたことが分かっていると、リポートがありました。
 また、国内の自動走行公道実証プロジェクトによれば、ラストマイル自動走行、中山間地域の道の駅などを拠点とした自動運転サービス、沖縄のバス自動車運転や大規模実証実験、高速道路でのトラックの隊列走行などの実験が各地で行われているという報告もありました。

自動運転開発の意義

 新美さんは、これから先の社会がどうなるかを見据えなくてはいけません。人口は1億を切り、自家用の自動運転の車にどれだけニーズがあるか。車を自分で所有しなくなるのではないか、と話されました。
 最後にPLオンブズ会議として、「利便性と安全を兼ね備えた自動運転社会を目指すために、事業者は十分な情報提供を。行政や事業者団体はまず用語の統一から、消費者は冷静に判断し理解を深めよう」との提言が読まれ、閉会しました。

→消費者問題・経済生活