488号(17年4月)

第55回 全国消費者大会〜変えよう日本 つくろう未来

〜消費者の選択、行動、協同で〜

第55回全国消費者大会
=四谷、プラザエフ

 3月10・11日、第55回全国消費者大会が「変えよう日本つくろう未来〜消費者の選択、行動、協同で〜」をテーマに、四谷の主婦会館プラザエフで開催され、2日間で延べ380人が参加しました。初日は5つの分科会と特別分科会が行われました。参加者の報告です。

「消費者政策」分科会
若者の被害拡大
〜これからの消費者教育を考えよう〜


保足和之さん(独立行政法人国民生活センター)、升本有紀さん(全国大学生活協同組合連合会)、吉田健さん(全国青年司法書士協議会)

消費者政策分科会

 全国の消費生活センターなどに寄せられる相談を見ると、20歳になった若者からの相談件数は未成年者と比べて多く、その契約金額も高額です。未成年者が行った親権者の同意がない契約は原則取り消すことができますが、成人になると未成年のような保護はありません。民法の成年年齢引き下げが成立した場合、若者の消費者被害の拡大は容易に想像されます。
 契約の知識に乏しく手元に現金を持たない学生に対し、悪質な業者は契約に関する説明は雑でも、消費者金融等からの借り方指南は懇切丁寧に行います。
 親としては、ある程度の子どものつまずきも必要と考えますが、今のご時世では被害甚大となります。被害の実例を伝えるだけでなく、消費者教育を取り入れる仕組みが必要です。
 わが子が加害者とならないためにも、子どもが親元を離れて一人暮らしをする際には、「困ったことがあったら消費生活センターに相談するように」と、一声かけて送り出したい、という参加者の声が印象に残りました。

「食」分科会
薬が効かない 世界で広がる薬剤耐性菌とは
〜食から考える抗生物質〜


齋藤文洋さん(東京保健生活協同組合)、関谷辰朗さん(農林水産省)、鬼武一夫さん(日本生活協同組合連合会)

食分科会
 結核予防会で多剤耐性菌について聞いていますが、耐性菌は特別な存在でなく、日常生活と重大な関わりがあると実感しました。
 抗生剤は、1929年のペニシリンに始まり、1940年にはブドウ球菌に耐性を持つ菌が現れ、対処するための開発が次々に行われました。
 現在カルバペネムは、最広域抗生剤であり、史上最強の抗生剤とみなされ、膨大な費用がかかる開発は止まっています。しかし市中にはカルバペネム系を無効にする菌が現れました。抗生剤だけでは限界となり、今、ワクチンで対応し効果が出ています。
 抗生剤を不用意に使えば使うほど耐性菌は増えます。手洗い、うがい(環境下には必ず耐性菌が存在)、抗菌グッズを使用しない、風邪で抗生剤を使わない、患者は要求しない(外来では90%減らせる)、肉・卵・乳製品等食品を吟味する(飼料をチェック)―消費者の関心と働きかけが国、企業を動かし食の安全が実現できます。(千葉県事務局長横山郁子)

「子育て・教育」分科会
奨学金地獄〜変えよう、貧困に陥る若者とその家族の未来を〜

大内裕和さん(中京大学)、宮永聡太さん(全国大学生活協同組合連合会)、花井圭子さん(労働者福祉中央協議会)

子育て・教育分科会
 今、全国の大学生、院生の2人に1人は奨学金制度を利用しており、生活は厳しい状況に置かれています。大学の学費高騰と家計収入の減少により、奨学金に頼らなければ大学に進学できない学生が半数を超え、卒業しても不安定な雇用で十分な収入が得られず、奨学金を「返したくても返せない」人たちが増加しています。その理由は、1984年の日本育英会法の全面改正により、日本学生支援機構へ移行、「第一種奨学金(無利子)」「第二種奨学金(利子付)」の主旨・制度が変わったことです。
 上昇し続ける大学学費と経済的困難により、ブラックバイト、親の連帯保証、期間保証など問題が多く、返済できるか不安で、将来結婚しても生活ができない。未婚化、少子化、人口減少へ、子どもの貧困へ、なんとも心が痛んでしまいます。大学では、学園祭よりも奨学金問題の方が学生の関心が高いそうです。
 若者・中高年層ともに深刻な状況に置かれている声が寄せられているそうです。(佐賀県理事向井敏子)

「社会保障」分科会
社会保障とその財源のあり方を考える 〜格差・貧困問題を糸口に〜

藤田孝典さん(NPO法人ほっとプラス)、菅隆徳さん(税理士)

社会保障分科会
 「高齢者が、死ぬ直前まで働かなければ生きられない社会がやって来る」という藤田講師の言葉が重くのしかかってきました。そういう社会になった時の社会保障制度、またそれを満たす財源はどのようにして作られるのか。税制、特に日本の税金の仕組みについて、菅講師から例題を示していただき、日本の税制は一部の大金持ちや大企業が優遇された法律で守られていることがとてもよく分かりました。
 日本は累進課税の国。収入が上がれば支払い能力に合わせ税金も高くなるべきで、一定以上の大金持ちや大資産家には富裕税をかけてもいいのではないかという講師の言葉には私も賛成したいです。
 税金は公正・公平に集められ使われなければなりません。私たちの払った税金がどのように使われているのかを知ること、もっと税制や憲法についても学び、次の世代の人たちが長生きしても安心して暮らしていける社会を作ることを、微力ながら国に呼びかけていこうと思いました。(帯広市婦人団体連絡協議会事務局長目黒久美子)

「環境」分科会
ぬいぐるみが海を汚す?
蛍光管が空気を汚す?
〜あなたの出すごみが環境を汚さないために〜


内田圭一さん(東京海洋大学)、原強さん(NPO法人コンシューマーズ京都)

環境分科会
 「ぬいぐるみが海を汚す?蛍光管が空気を汚す?」のサブタイトルに、興味津々で参加しました。ぬいぐるみを洗濯することによって、毛羽立つ微細な繊維(マイクロファイバー)が深海生物内から発見されたという説明から、洗濯の問題点は「洗剤」だけではないことをあらためて確認しました。
 また、体温計や血圧計とともに水銀使用製品の蛍光管は、必ずしも適正な処理が行われているとはいえないそうです。便利な生活とは裏腹に、考えなければならない「ゴミ」があることをあらためて意識する機会となりました。
 新潟県内のゴミ袋有料化の地域では、かなり細かい分別収集がされています。慣れるまで戸惑いもありましたが、「家庭ごみの分け方・出し方」や「ゴミ分別百科事典」、さらには「ゴミ分別アプリ」など、さまざまな方法を利用してゴミの仕分けを行っています。ゴミ処理に「標準化」が取り入れられ、正しい処理による資源の有効利用で、クリーンな環境を手に入れたいと思いました。(新潟県会長外石栄子)

特別分科会
憲法と震災〜復興から見る私たちの基本的人権〜

中村弥生さん(いわて生協組合員活動チーム)、村上裕美さん(ふくしま復興共同センター)、津久井進さん(弁護士)

特別分科会
 最初に被災地から報告があり、岩手の中村さんは復興の現状と生協としての支援活動について、福島の村上さんは原発事故の風評被害に差別や偏見、避難している子どもに対するいじめなどがあり、正しい現状が伝わっていないことを話されました。
 講師の津久井さんは、人は個人として尊重され、生命、自由、幸福追求の権利がある。災害により失われた権利を、法律で救済しよう。法律がなければ作ろうと説かれました。
 在宅被災者には物資の配給がないことは聞いていました。衣食住の権利は皆同じです。そうか、法律を変えればいいのです。
 ものを考え、意見を出し合い、自分たちの生活の中に反映させるのが民主主義です。これが普段から機能してなくてはなりません。私たちは生活者としての声を上げることが必要です。
 災害復興のゴールは一人ひとり違うもの。人に寄り添い、共感し、自立が終わるまで支援を続けましょう。(山口県事務局長平野愛子)

2日目

稲葉剛さん
 2日目の全体会は、分科会の報告と講演です。
 開会に先立ち、来賓の松本恒雄国民生活センター理事長は「国民生活センターでは、従来の高齢者や子どもといった弱い立場の消費者に向けた取り組みに加え、今後は国際化に向けて外国人からの相談などにどのように対応するか。また、消費者に代わって損害賠償や返金の訴訟を起こせるようになった適格消費者団体への支援などが今後の重点課題です」と挨拶されました。
 講演は、一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事・稲葉剛さんの「貧困の現場から社会を変える」
 住居を喪失したことに起因する悲しい事件を例に挙げ、仕事の不安定化と住まいの不安定化は連動している。マイナンバー制度の影響もあり、住居がない(=住民票がない)ことは、求職活動が極めて困難になることに加え、公的サービスからも排除されやすくなる。住まいの喪失は精神的なダメージとなり、誰にも相談できなくなり、人間関係の喪失につながっていく。
 日本では「住まいは人権」という観点が低い。貧困問題を社会的に解決するためには、「ホームレスには屋根さえあればいい」ではダメで、安全・安心に暮らせる適切な住まいの保障が必要です。悲劇を繰り返さないためには、自己責任論や生活保護等の制度を利用しないことが美徳とされる風潮をなくし、当たり前の権利として制度を使える社会にしていかなくてはならない。貧困に対する私たち自身の眼差しが問われています、と話されました。

→消費者問題・経済生活