472号(15年12月)

2015年度 全地婦連幹部研修会開催

全国から99人が参集 国立女性教育会館 11月19・20日

 全国から99人が国立女性教育会館(NWEC)に参集して、2015年度幹部研修会は11月19・20日に開催されました。地方創生は女性の活躍が鍵、紙おむつのリサイクル、北方領土問題の3つのテーマを学びました。

3つのテーマ

 ・地方創生は女性の活躍が鍵
 ・紙おむつのリサイクル
 ・北方領土問題研修会
2015年度幹部研修会
=11月19・20日
NWEC内海理事長(右)のご挨拶
=夕食懇談会で

〈テーマT〉地方創生は女性の活躍が鍵
講師=内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局
地方創生総括官補 佐村知子さん

佐村知子さん

出生率の低下

 超高齢化の状態で起きる人口減少は、消費や経済力の低下を招き、働く世代は高齢者世代を支え切れなくなります。政府では一定規模の経済水準を維持していくため、2060年に人口1億人を目指すことを昨年12月に閣議決定しました。
 出生率低下の原因は、「未婚率の上昇」と「夫婦の子ども数の減少」です。未婚者は男女とも9割以上が結婚を望み、また2人以上の子どもを授かりたいと考えていますが、実際の出生率とは隔たりがあります。まず若い人たちの希望を実現できる社会を目指すため、政府は2030年に「国民希望出生率1・8」という数値を目標に掲げました。

人口減少

 東京への人口集中は、単純に地方から東京への人口移動というだけではありません。出生率が極めて低い東京への人口集中により、あと30年もすると急速・深刻な高齢化が長期間続きます。若者が地方から東京に流出する大きな理由は大学進学時と就職時であり、地方での「しごと」は重要な要素となります。
 「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の基本的視点は、(1)若い世代の就労・結婚・子育ての希望の実現(2)東京一極集中の歯止め(3)地域の特性に即した地域課題の解決です。「しごと」と「ひと」の好循環を実現するためには、(1)地方における安定した雇用創出(2)地方への新しい人の流れをつくる(3)若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる(4)時代に合った地域づくり、安心して暮らせる地域と地域を連携する、という4つの目標が魅力あふれる地方を創生すると考えます。
 国は命令するのではなく、地域で考える材料を提供し、人材や財政の支援をします。

なぜ女性の活躍が必要なのか

 「人口減少」「少子高齢化」「生産年齢の減少」がいわれ、女性はわが国最大の潜在力といわれていますが、長時間労働を強いられる日本の男性が家事・育児に費やす時間は世界的に見ても最低水準です。夫の家事・育児時間が長いほど、第2子以降の出生割合が高いことも分かりました。
 子育てには祖父母への期待も高く、地域における子育て支援も重要です。しかし、就職時に、親元や地元を離れたかったという理由で、地元の就職先を選ばなかった女性の割合は男性と比べてより高いことが分かりました。
 地方創生は、若い世代、中でも女性に魅力ある地域づくりが大切で、いったん都会に出ても「戻ってくる・戻ってきたい」地域づくりが課題です。
 女性の活躍は、日本の成長戦略の要です。希望する女性が、安心して、結婚・出産・子育てや仕事ができるよう社会のインフラづくりと、周囲の温かい見守りや意識改革、支援が必要です、と結ばれました。

〈テーマU〉紙おむつはリサイクルの時代へ
講師=王子ネピア(株)ケアサポート事業本部・顧問 須東亮一さん

須東亮一さん

 高齢社会で紙おむつの使用量・生産量は右肩上がりです。企業としてはとてもうれしいことですが、ごみ処理という新たな問題が起こりました。尿や便を吸収した使用後の紙おむつは3倍もの重さ、体積のごみになるのです。
 回収と運搬で費用がかさみ、水分を含み燃えにくいので、助燃材の重油で水分を飛ばします。その結果、大量の二酸化炭素が排出されます。
 高機能の紙おむつは化学繊維で急激に高温化しやすく、また体液は塩分を含んでいるため塩素を出し、焼却炉を傷めます。高価な焼却炉を延命させるためには、使用済み紙おむつは一般廃棄物として焼却したくないのです。
 紙おむつメーカーとして、ごみ処理問題には深い関心を寄せています。近い将来、使用済み紙おむつのリサイクル商品の製造ができるかもしれませんが、今の段階で一番よいと考え賛同したのが、スーパー・フェイズ社の、分別された使用済み紙おむつを安全・清潔に燃料化する仕組みです。
 2011年に鳥取県の伯耆町が、自治体として初めてこのSFDシステムを導入し、大きな成果を収めました。このシステムでは水も火も使わず、静かに粉砕、無排水で乾燥し、滅菌、燃料化します。「可燃ごみの削減」が実現でき、二酸化炭素の排出削減とエネルギーの地産地消も達成できます。
 導入・運営コストを試算してみると、焼却炉の建て替えより経済メリットがあることが分かりました。
 システム導入には、伯耆町のように自治体による導入、病院・施設自らの導入、回収事業者による導入があります。途中でやめることができてしまうボランティアではなく、これらをビジネスとして進めていきたいと考えます。
 紙おむつ・衛生ごみのリサイクルには、分別の意識と回収の仕組みが必要です。生活者、自治体・行政、メーカーの責任で、普及促進の環境づくりをしていきましょう、と話されました。

〈テーマV〉北方領土問題研修会 日露関係の現状と北方領土問題の展望
講師=防衛省防衛研究所地域研究部長、青山学院大学院兼任講師 兵頭慎治さん

山本茂樹さん
兵頭慎治さん

 はじめに、内閣府北方対策本部審議官山本茂樹さんからご挨拶があり、若年層に向けた参加型イベント実施の取り組みなどを紹介されました。

 北方領土を取り巻く状況は刻々と変化しています。2013年に安倍首相がロシアを公式訪問し、日露関係を前進させていくと決めたにもかかわらず、ウクライナ危機の影響を受けて足踏み状態です。
 ウクライナ問題は解決していませんが、安定化の兆しがあり、これならプーチン大統領の訪日がかなうのではないかと思った矢先、ロシアがシリアに空爆を開始、アメリカとロシアの関係が悪化しました。パリでは大規模なテロが起こり、フランスが間を取り持つ形で、イスラム過激派組織に対してアメリカとロシアが連携し、共調する雰囲気が出てきました。
 日露関係はこれまで、世界情勢や米露関係には左右されませんでしたが、ウクライナ危機以降、米露関係に日露関係が影響を受ける事態が生まれました。
 クリミア併合、シリア空爆の対外強硬路線により、国内での批判要素を人為的にしずめ、下降傾向にあったプーチン大統領の支持率は劇的に上昇しました。2018年に大統領選挙をひかえ、プーチンに代わる後継者不在といわれていますが、プーチンはロシア人男性の平均寿命である64歳。ロシアの場合、権力者の最大のウィークポイントは健康不安が露呈することで、国民や側近から足元を見られると権力闘争がはじまるといわれ、国内外に対して、元気であるというアピールが必要なのです。領土交渉の大前提は、指導者の政治基盤が安定し強固であることです。長期安定化の見通しが強まった安倍首相は、プーチン在任期間の2年での解決に強い意欲を示しています。
 ロシアの対日アプローチに、7月以降大きな変化が現れました。メドベージェフ首相以下政府閣僚の北方領土訪問や、クリル発展計画、北方領土の人口増加計画、サケ・マス流し網漁の全面禁止など、日本に対して強硬な姿勢を見せながら、首脳会談、安全保障会議など前向き融和な姿勢を見せるという一見矛盾に見えるロシア流交渉術が、日本に対して向けられてきました。プーチン訪日を踏まえて、ロシアは本気で領土交渉をやる用意がある、というシグナルととらえます。
 政治、行政、国民の世論それぞれがしっかり役割分担し、これから始まる政治交渉の後押しをどれだけできるか。日本はどこまで本気なのか、ロシアはわれわれの様子をしっかり見ながら交渉してきます。四島返還を強く求め、ロシアに政治的妥協案を見せてはいけません。決して領土問題を日露関係だけ切り取って見ないこと。グローバルな国際情勢の中で、日露関係は影響を受けています、と結ばれました。

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ビザなし交流訪問事業報告

 ビザなし交流訪問に参加した、川崎市副会長の岩本孝子さんと東京都理事の飛田恵理子さんの報告がありました。
 岩本さんは、エネルギー、ゴミ、健康問題について印象に残ったことを、飛田さんは、相互訪問をして理解を深めてしっかり足跡を残し、みんなで文化を共有し、日本文化を伝える一歩進んだ取り組みをしていきたい、と報告しました。

 最後に元全地婦連事務局長で、10月に独立行政法人国民生活センター理事に就任した加藤さゆりさんから、国民生活センターの紹介を兼ね、ご挨拶がありました。