402号(10年2月)

幹部研修会の報告
消費者政策・製品安全・北方領土問題


泉健太内閣府
大臣政務官


研修会の様子。東京代々木のオリンピック記念青少年総合センターの国際会議場にて
 12月14・15日、全地婦連幹部研修会を開催しました。各専門分野や政策の第一線で活躍される方々を講師にお招きし、北方領土問題、消費者政策、製品安全、そして地球温暖化問題と省エネまで、最新の情報で学びました。





消費者行政・製品安全

消費者行政・何をどう変える
消費者庁長官 内田 俊一 氏

消費者庁設立の意義

 消費者庁は“3つの一元化”が求められています。一つ目は、各省がバラバラに実施してきた消費者行政を一元化することです(ガス湯沸かし器による中毒やこんにゃくゼリーによる死亡事故を長年防ぐことができなかったのは、各省庁が連携せずに個別に情報を集め、有効な対策がとれる法体系になっていなかったため)。複数の法律を消費者庁の所管に移すことで、さまざまな分野の問題に直接対処できるようになったので、内閣総理大臣のところで意思が決まれば、各省が一つの方向で動くことができる形になりました。
 二つ目は、消費者の声が消費生活センターや地方行政から国へと届き、消費者に対する情報も逆に国から地方行政を通してセンターに届くという流れをつくること。
 三つ目は消費生活センターを一元的窓口として強化・拡充することです。
 これまでとは全く違う、新しい消費者行政の体系が生まれたのです。

3ヵ月間の取組みから

 関係機関は消費者事故の情報を消費者庁に通知する義務ができました。9月〜11月の3ヵ月間に500件以上の情報が寄せられ、その中から重大事故について国民にお知らせをしました。一方で所管の役所に情報を下ろし、原因の究明と再発防止策を講じるよう依頼しています。また重大事故の公表方法についてのルールをつくり、そのルール自体も公表しました。
 安全に関しての取り組みとして、「食品SOS対応プロジェクトチーム」を立ち上げ、エコナの特保の取り消しを前提に再審査の手続きを始める動きをしました。また北海道の古書店で起きた本棚倒壊事故では警告を出す必要があると考え、職員を派遣し警察庁、道警の協力を得て詳細な説明を受けました。消費者事故かどうかの議論より前に先ず「見に行く」という動きをしていく必要があると思っています。

次のステップへ

 消費者庁の事業を5つの部門に整理し「行程表」の形で公開しました。
  地方消費者行政について、大きな課題は「相談員の処遇の改善」と「研修」になると思います。それがセンターをパワーアップし、地域の消費生活の質を上げるものだと首長さんたちにわかっていただく取り組みもして、さらに制度をしっかりとつくっていく。このようなステップで地方消費者行政の強化を進めていこうと思います。
 他にも事故情報の分析や新しい被害者救済制度、健康食品の表示の問題についても専門家による研究会を立ち上げています。
  「消費者行政推進基本計画」には、消費者庁は「行政の改革のための拠点だ」と書かれており、大きな宿題をあずかっていると感じています。
  「消費の現場にある一人ひとりの姿をしっかりと受け止め霞が関に伝えていく」。そんな取り組みを続けることができれば、もしかしたら霞が関を変えていけるのかもしれない。そのためには役人たちが頑張るだけでなく、国民一人ひとりの声をしっかりと伝えてくれる地婦連をはじめとする消費者団体の皆さんの活躍が必要です。ぜひ一緒に新しい消費者行政を進めていただきたいとお願いをいたします。

安全性に関わる消費者問題〜最近の危害事故例より〜
独立行政法人 国民生活センター 危害情報室長補佐 青山 陽子氏




 商品やサービス、設備等により生命や身体に危害を受けた事例を「危害情報」と呼びます。国民生活センターでは消費生活相談として受け付けた情報と20の協力病院から寄せられた危害情報を調査・分析し、情報提供を行っています。
  事例(1) 「浴槽用浮き輪が転覆し、乳幼児の溺水事故が起きている」との情報が小児科医から寄せられました。調べると医療機関では比較的知られていた事故で、溺死した例も。保護者が目を離したすきに起きる事故のため「親の不注意」と認識されてしまい、消費者相談として情報が寄せられずに事故が繰り返されていました。製品の安全を示すSTマークもあり、パッケージにも幼児がひとりで利用するイメージを多用。死にいたる事故の危険性は認識できませんでした。(写真1・2)
 事例(2) 4歳の男の子が電動リクライニングベッドのマットとヘッドガードの間に首を挟まれ窒息死する事故が起きました。類似品との比較テストで、事故品は挟み込み力が強く大人でも挟まれること、リモコンのスイッチが自動的に押されやすい形状であることがわかり、メーカーに改良を申し入れ、修理・回収へと動きました。(写真3)
 事例(3) 自動開閉式の折りたたみ傘は、ボタンを押すと開閉ができて便利ですが、その分バネの力が非常に強く、柄の部分が突然飛び出して目に当たったり歯が折れる事故が報告されています。便利な機能が危険にもつながります。(図1)

 事例(4) 自転車用の傘ホルダーに差し込んだ傘が車輪に巻き込まれ大けがに。傘の先端を車輪の横に固定して柄をハンドルに掛けて使用するもので、検証試験の結果、ちょっとした段差を乗り越えると外れるという危険性が明らかになりました。
 事例(5) キャリーバッグによる事故の相談が増加。他人をけがさせてしまうケースも。(写真4)
 事例(6) お菓子にそっくりなせっけんが販売されていて、誤って食べてしまったとの情報が寄せられています。     

 安全性は法律だけでは守れないと感じます。製品が作る側の論理で考えられていて、ちょっとした配慮が足りないために思わぬ事故が起きてしまう。今の時代明らかな欠陥商品はめったにありませんが、企業の姿勢で大きな違いが出てくるのではないかと思います。

写真1 身を乗り出したことを想定し、 ダミー人形を少し持ち上げた
写真2 後方に倒れた後転覆した 写真3 死亡事故を起こした電動リクライニングベット

図1 自動で中棒が伸びて傘が開く 写真4 キャリーバックでの
事故が増加
 写真・図の提供:国民生活センター

北方領土問題

内閣府の取り組み
内閣府北方対策本部 審議官 小河 俊夫 氏

 内閣府の小河審議官からは、鳩山内閣発足後の政府の動きと啓発活動について。また長年この問題に係わり地婦連の果たしてきた役割もご存知の北方領土問題対策協会顧問の井上達夫氏からは、ロシア側の動きとその背景について解説いただきました。

 平成20年に実施された世論調査で、政府の北方領土問題の取り組みについて「聞いたことがない」と答えた方が20歳代で20%を超えました。これを受け啓発活動の軸足を移してきました。
 新宿駅前で行ったパネル展を、根室物産展と同時に開催し、たくさんの方にお越しいただきました。国民の関心を高め「返還要求運動が難しいものではない」と理解いただくためにもこうした取り組みが重要だと思います。
またインターネットの活用など情報発信力の強化にも取り組んでいます。
 学校教育にも取り入れてもらおうと教科書会社への説明会を行いました。また根室地区を修学旅行で訪れた高校生が自ら教材を作り、中学生に授業を行うといった試みも行われています。
 地域でも、学校をひとつの中心とし、いかに手を携えていくかが大切だと思います。

北方領土問題の新局面と返還要求運動
北方領土問題対策協会 顧問 井上 達夫 氏

 この1年は入出国カード提示の問題に揺れた「ビザなし事業」や頻繁に行われた日ロ首脳会談の新聞報道が目立ち、さまざまな形でロシア側からの働きかけが活発だったというのが特徴です。
 この問題に対する現在のロシアの政策は、プーチン元大統領の確立した「対日関係は重要で平和条約の締結が必要である。四島へのロシアの主権は戦争の結果確定しており、二島引き渡しはロシア側の善意による」との方針が継承されています。
 沿海州とハバロフスク地方でロシアの方々と話をする機会を持ちましたが、「日本との関係を拡大・充実したい」、「この問題が両国関係の障害にならないように」との共通した思想がありました。
 一方で、人口の4割を60歳以上が占める中、膨大な犠牲を払った大戦参加者の心情は無視できず、仮に日本の主張を認めたとしてもこの4割への説得は難しいだろうという意見もありました。
 民間外交では、ロシア側の態度の根底にある事情を理解し、彼らの抱える悩みに答えられる形で話を進めるという観点が大切だと感じています。


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