382号(08年6月)
たずねるシリーズ10
−(社)全国消費生活相談員協会−
 今回は、各地の消費生活センター等で活躍する専門家・消費生活相談員の全国組織である、(社)全国消費生活相談員協会(下谷内冨士子理事長)を東京の品川に訪ね、山上紀美子専務理事にお話をうかがいました。


くらしの経験豊かな女性たちが主役の専門家集団

 (社)全国消費生活相談員協会(以下、全相協)の前身は、国民生活センターが実施する消費生活相談員養成講座の終了者により1977年に結成された「国民生活センター消費生活相談員養成講座修了者の会」です。
 全国初の消費生活の専門家集団として活動を開始。1987年に社団法人全国消費生活相談員協会となり(経済企画庁‖現内閣府所管)、昨年創立30周年を迎えるとともに「消費者契約法」の適格消費者団体として、内閣総理大臣から認定されました。
 会員の多くが全国各地の消費生活センター等で、年間100万件以上の消費者被害の救済や未然防止に取り組んでいます。全国津々浦々で日々地道に、わたしたちのくらしのトラブル全般の解決のためにたたかってくれている専門家組織なのです。そしてほとんどが、くらしの経験豊かで使命感にあふれる女性たちです。
 
組織と活動

 全国の相談員をつなぐため、北海道・東北・関東・中部・北陸・関西・九州支部(北陸は今年度から)をネットワークしています。各支部も独自に研究会や啓発事業などを行っています。
 さらに消費者情報研究所と消費者団体訴訟室(後述)を設置。企画活動、相談事業、消費者教育推進、フォローアップ、広報の5つの委員会があります。
 また以下のような多様な活動のほか、シンポジウムなど公開討論会や講座、企業の消費者関連窓口担当者と会員との意見交換会の開催、全相協つうしん「JACAS JOURNAL」(年6回)も発行しています。

電話相談ならびに政策提言など

 「週末電話相談」は1998年から東京(土・日)で、翌年からは大阪(日)も加わり、年末年始を除いて実施しています。また、今年度から北海道でも始まりました。年々相談件数は増加しており、寄せられた相談を事例集にして無料(送料負担)で希望者に配布しています。高齢者に多量で高額な買い物をさせるようなSF商法、語学学校の倒産、多額の借金、海外事業への投資、食品安全、海外宝くじの詐欺、インターネット上のオークションでお金を払ったが商品が届かない、などです。
 「電話相談110番」は1987年から実施しており、深刻な消費者問題や、法改正が検討されているテーマで全国一斉に電話相談を行います。契約なんでも110番、生命保険会社・損害保険会社の医療保険110番のほか、電話・携帯・インターネットなど通信トラブル、介護など高齢者トラブル、内職・代理店商法、などのテーマで実施してきました。
 電話で相談に直接答えると同時に、寄せられた相談から被害の実態を把握・分析し、関係省庁等へ意見書や要望書を提出する場合もあります。その結果、訪問販売法や旅行業法、生命保険業法など、実際に法改正の後押しとなったこともあります。

消費者教育・啓発 あらゆる世代を視野に入れて

 全相協では、消費者トラブルを防ぐ最良の方法の一つは、やはり消費者自身がトラブルに巻き込まれないための知識や対処法を知っておくことであるとの認識から、消費者教育や啓発にも力を入れています。

適格消費者団体としての事業者への警告活動

 2007年6月に消費者契約法が改正され、「消費者団体訴訟制度」が始まりました。これは消費者全体の利益を擁護するため、一定の要件を満たす消費者団体を内閣総理大臣が「適格消費者団体」として認定し、適格消費者団体には、事業者の不当な行為(不利な契約条項や勧誘)に対する差し止め請求ができる権利を与えるものです。
 全相協はその適格消費者団体として認定されており、消費者団体訴訟室を設置して活動を始めています。
  (認定前からの取り組み事例ですが)専門学校の入学辞退者における学納金返還に関する問題や、ウィークリー/マンスリー・マンションを経営する(株)レオパレス21に対する「部屋の賃貸借契約における中途解約に係る精算条項」についての申し入れなど、契約条項の中に、消費者が不当に不利益を受ける文言が入っている場合、それを正すよう申し入れを行い、一定の成果を挙げています。
 こうした不当な条項等の存在は、週末電話相談や電話相談110番での相談事例から明らかになる場合が多く、地道な相談事業の価値がここにも大きく現れています。

相談員の労働環境
貴重な人材を社会は生かせるのか?


 消費生活相談は、くらしのあらゆる分野にまたがる課題に対応しなければならないため、非常に高度な専門性と経験の蓄積が求められます。資格試験に受かるにもかなりの勉強が必要ですが、消費生活センターなどである程度自信をもって仕事ができるようになるには、相談現場に入って5年程度かかるといわれています。
 しかし日々激務に耐える消費生活相談員の待遇は総じて厳しく、非常勤で時給も低く、残業手当も出ない、次々生じる消費者問題に対応するために必要な研修も自費で、しかも5年程度で契約更新がなされなくなる「雇い止め」もあります。
 また全国には消費者相談の部署や窓口を持たない自治体もたくさんあり、あったとしても専門の資格を持たない人が兼務しているなど、非常に厳しい環境です。
 現在、新消費者行政組織の実現をもとめて全国の消費者団体が立ち上げた全国会議(ユニカネット)でも、全相協は代表幹事の一人として消費生活相談員の実態調査の結果を示しながら、地方消費者行政の充実と、そこで働く消費生活相談員の働く環境の改善を訴えています。

広く社会と連携しながらさらに発揮される力

 全相協の力の源にあるのは、消費者被害を防ぎたい、被害者を救済したい、という真摯な思いでしょう。しかし個々の相談員だけでは、日々相談業務に追われるばかりで、社会的に大きな力を発揮することはできません。
 全相協は、消費生活相談員のネットワーク組織としてこれらの活動に取り組むと同時に、企業の消費者相談担当者等との交流、特定商取引法の全国実現会議、全地婦連も加盟する全国消費者団体連絡会やユニカネットでの活動など、組織内だけでなく、他の消費者団体や専門家、企業と、幅広い関係を築き上げながら、その力を発揮しています。
 市民社会における組織とネットワークの重要性を体現しているといっても過言ではないでしょう。
 消費生活相談員のみなさんにこれからもよい仕事をたくさんしていただけるよう、私たちもその存在意義と活躍の様子を共有しながら、応援していきたいものです。

【全相協の消費者教育・啓発活動】

*消費者問題出前講座・講師派遣
  平成13年から始まった出前講座(内閣府請負事業)は7年間ですでに全国約1万2000カ所で開催。当初消費者契約法の周知が目的でしたが、高齢者をねらう悪質商法の急増をきっかけにトラブルの手口や対処方法を伝えるものでした。現在は高齢者や障害者本人、その周囲の人(民生委員・介護へルパー・手話通訳者・家族など)、未就学児のいる子育て世代、児童・生徒、教員・保護者、大学生・専門学校生などと、対象はあらゆる世代や立場の方がたです。
  企業からの講師派遣依頼もあり、新人研修の一環として消費者トラブルを避けるための基礎的な知識を身につける講座など、ニーズは多様です。

*パンフ・冊子等啓発資料の開発
  「トラブルあれこれ・若者編」「同・小学生編」「悪質商法あれこれ」のほか“ヤミ金融”への注意の呼びかけなど、イラストをふんだんに使い、大変わかりやすく工夫を凝らしたものを作成し、配布しています。
  これらはその都度、日々相談業務に携わる会員が作業チームを作り、寄せられた相談をもとに新しいアイディアを出し合い、新鮮でインパクトがあり、しかも各世代の感覚に届きやすく理解しやすい内容にする努力が行われています。

★全相協ホームページから、消費者問題出前講座を申し込めます。
http://www.zenso.or.jp/index.html

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