381号(08年5月)
個人情報保護をめぐる課題
(プライバシー保護か?匿名社会化か?)
全地婦連監査
国民生活審議会委員
夏目 智子



 近年、インターネットを通じてさまざまな個人情報が流出したり、プライバシーへの配慮を理由に学校で連絡簿が作られないといった現象が起きています。また、例えば現在、地域においては災害時要援護者の把握と支援体制づくりが推奨されていますが、そうした地域防災や福祉活動の場面でも、個人情報の取り扱いという話題が出ることがあるのではないでしょうか? この問題に関係するのが「個人情報保護法」ですが、いわゆる「過剰反応」問題を含め、現在議論されている内容をご紹介します。

個人情報保護をめぐる課題

 個人情報保護法は、正式名称を「個人情報の保護に関する法律」といい、個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的としています。
  誰もが安心して高度情報通信社会の便益を享受するための制度的基盤として、平成15年5月に公布、平成17年4月に全面施行されました。

法律の制定後 個人情報保護の「過剰反応」

 しかしこの法律制定後、個人情報に対するいわゆる「過剰反応」現象が起きました。
 その現象は大きく三つに大別されますが、(1)学校の連絡簿を作らない現象(2)民間事業者が出すべき情報を出さない現象(3)個人情報を盾にした役所の情報隠しです。
 いずれも個人の特定を避けようとするもので、必要な情報が共有されない匿名社会への懸念をもたらしています。

法改正せず運用改善で対応

 第21次国民生活審議会個人情報保護部会では、「個人情報保護に関する取りまとめ」で示された内容(=いわゆる「過剰反応」への対応、基本方針の見直し、ガイドラインの共通化について必要な検討を行うこと等)の要請に対し、平成19年度中を目途に、基本方針の見直しを行いました。
 部会は平成19年の暮れから4回行いましたが、その議論の柱は、社会問題化している「過剰反応」への対策で、これらの過剰反応を踏まえた取り組みを、個人情報の保護に関する施策の推進についての基本的な方向に記述し、法改正ではなく法の運用で対応することとし、基本方針を一部改正しました。

基本方針の変更内容

 (1)「過剰反応」‐いわゆる「過剰反応」を明記の上、積極的な広報・啓発活動に取り組むことを宣言。また、国の行政機関、地方公共団体、独立行政法人等の保有する個人情報の取り扱いについて、法律・条令の適切な解釈・運用を明記。
 (2)国際的な取り組みへの対応‐OECD、APEC、EU等で進められている国境を越えた取り組みを踏まえ、わが国として必要な対応を検討。
 (3)プライバシーポリシー等‐本人の権利利益保護の観点から以下の点を考慮した記述を盛り込むことも重要と指摘。(保有個人データの自主的な利用停止等、委託処理の透明化、利用目的の明確化、事前に取得元・取得源等をできる限り具体化)
 (4)安全管理措置の程度‐例えば市販名簿等については、シュレッダー処理をしなくても、安全管理措置義務違反にならないとすることができる旨明記。
 また、議論を重ね、個人情報取扱事業者等が講ずべき個人情報の保護のための措置に関する基本的な事項に「消費者等の権利利益の一層の保護」を独立した項目として記述することができました。
 今後はガイドラインの共通化、第三者機関のあり方等について議論を進める予定です。

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