367号(07年2・3・5月)
最近の消費者問題から、消費者団体の
活動・存在の社会的意義を考える<上・中・下>
食品安全問題

 たいへん残念なことに、長年お菓子をつくり続けてきた不二家が、不注意では済まされないずさんな管理を露呈しました。
 古くは森永ヒ素ミルク事件、カネミ油症事件、最近では雪印乳業製品による集団食中毒など、命・健康を害する事件は繰り返し起こっていますが、そのたびに企業対応や政策の改善を訴え、時に被害者の支援も行ってきた消費者団体の存在があります。

■食の国際化と安全基準

 80年代、貿易摩擦の広がりで日本は市場開放を迫られ、生活に関わる諸基準・認証制度も緩和されだしますが、食品輸入の拡大と連動した「食品添加物規制緩和」については、全地婦連を含む消費者団体や農協など93団体を巻き込んだ国民運動として、規制緩和反対の署名・請願活動、集会の開催などに取り組んだ歴史があります。
 BSE問題についても、全地婦連を含む消費者団体が、問題発生当初からさまざまな申し入れやアピールを実施しており、マスコミに取り上げられています。

■国の食品安全政策と消費者運動

 日本の食品安全行政の大きな転換となった2003年の「食品安全基本法」の成立背景にも、消費者団体の粘り強い運動がありました。
  このように私たち日本人の、食の安全・安心と農林水産漁業の未来の問題については、経済振興、貿易問題・国際関係問題にのみ偏って政策判断がなされないよう、政府にバランスある政策構想力と力強い国際交渉力を発揮してもらえるよう、消費者として常に関心をもち、声を届けることがとても大切です。

製品問題

 自動車のリコール隠しはもとより、最近のパロマ工業のガス機器不正改造による一酸化炭素中毒死、シュレッダーによる幼児の指の切断事故など、事故も残念ながらなくなりません。
 そこで重要なのが「製造物責任法」(PL法)です。

■製造物責任法と消費者運動

 PL法は、製品の欠陥によって生命、身体または財産に損害を被ったことを証明した場合、被害者は製造した会社などに対して損害賠償を求めることができるという法律で、製造業者などは、過失の有無にかかわらず、損害を賠償する責任があると明記されています。
 この法律も、さまざまな製品事故の問題に長年取り組んできた消費者団体が、家庭用冷凍庫が突然火を噴くという象徴的な事故を取り上げるなどしながら、産業界の大きな反対をうけつつも、弁護士・研究者などと連携して約8年の歳月をかけて運動を展開し、制定に至ったものです。

地婦連の消費者運動
 
 全地婦連と各加盟都道府県市団体、郡市と地域の単位婦人会・女性会も、長年、消費者問題に関する多様な学習と運動を実践してきましたが、地婦連のユニークなところは、個々の家庭・地域に根ざした活動を大切にしながら、同時に郡・市、都道府県、全国とネットワークを組んだ活動を展開してきたことです。

■LPガス使用実態調査と新LPG法

 この特徴がよく現われたのが、昭和42年に実施した「LPガス使用についての実態調査」で、都市型消費者運動では取り上げられなかったLPガスについて、農山漁村を含む全国の会員2万7400世帯を対象に、価格・保安・計量に関するアンケート調査を行ったものです。
 この実態調査結果をもとに、全地婦連として通産大臣宛てに、正しい計量取り引きの促進、LPガスメーターの普及、流通機構の合理化と特に価格の高い地域における価格引き下げ対策の実施などを求める要望書を提出。これが新LPG法の成立へとつながります。

■家庭・地域に根ざしつつ

 現在でも多様な学習・実践が行われています (消費者行政への参画、高齢者向けの詐欺注意喚起、環境にやさしいライフスタイル・地域づくりなど)。
 主婦の視点で、お正月需要で値上がり傾向のある歳末に、価格のつり上げを抑止する「物価パトロール」(沖縄県・宮古島婦人連合会)や、業者と直接交渉し、価格を抑えて正月用の食料品などを仕入れて消費者に安く販売する青空市の開催(岡山市連合婦人会)なども長年にわたって続けられています。

経済産業省が、一酸化炭素中毒/換気の重要性に加えて「死に至る」危険性の周知要請

 この20年余の間に、一酸化炭素中毒事故による死者が159人にのぼることが報道などにより明らかになっています。
 一酸化炭素中毒事故防止策として経済産業省は、ガス事業者とガス機器メーカーなどに対して、使用者にガス機器を安全に使用してもらうためにも、従来からの「換気の重要性」にとどまらず、一酸化炭素中毒は「死に至る危険性」があることを周知するよう要請しました(2007年2月23日付)。
 ガス機器を使用しているときは、面倒がらずに換気に努め、不完全燃焼防止機能など、安全装置のついたガス器具への交換もできるので、現在使っているガス機器を確かめてみましょう。ついていない場合は、最寄りの事業者か販売店に相談してください。
 私たちは機器を正しく使い、事故防止のためには、製品の安全設計はもちろん、保守点検(保安)、事故情報の収集並びにその一元管理、速やかな情報の開示などが肝要であることは言うまでもありません。

消費者団体訴訟制度とその活用

 長年消費者団体が運動し、昨年国会で成立した「消費者団体訴訟制度」は、被害を受けた消費者に代わって、適格と認められた消費者団体が、不当な契約内容や勧誘のもとで営業を行っている事業者に対して、訴えを起こす権利を認めるものです。英会話学校との契約や、賃貸住宅の敷金・礼金、リフォーム詐欺などがこの制度の活用テーマとして挙げられます。
 インターネットを使った取り引きや新しい金融商品の登場なども含めて、売買や取り引きが自由化・複雑化している中で、行政の規制や監視だけでは消費者を守ることができないため、相談業務などを行っている専門的で信用ある民間の消費者団体も、市場の監視・警告活動に参加することになります。

経済活動が自由化・活発化・複雑化するほど、消費者団体の存在・活動が大切になります。
  実際に全地婦連を含む、長年価格や適正取引問題に取り組んできた団体は、公正取引委員会や国民生活センターとの意見交換会などにも定期的に参加しています。
 橋梁談合が明らかになったときも全国消団連のもと、公正取引委員会や日本経団連に対し、談合にかかわった各企業に厳しい対応をするよう申し入れました。企業との対話も多様な形で行っています。

(株)不二家による消費者団体への説明会

 4月23日、(株)不二家による期限切れ原料使用問題に関するその後の対応状況についての説明会が全国消費者団体連絡会で開かれました。
 会には不二家の広報と、品質保証担当役員などと、社外から信頼回復対策会議の外部委員として加わった消費者問題の専門家4人が出席しました。
 まず「昨年11月に、埼玉工場で期限切れ原料を使用した事実を把握した。社長から改善を指示した矢先に内部資料がリークされ、『隠ぺい』と報道されてしまった。その後の記者会見の対応にも不備があり、報道が過熱した」との話があり、工場の衛生対策についても説明がありました。
 これに対し消費者団体側からは、「マスコミ報道のあり方が説明資料の最初に来るのはおかしいのでは? 工場見学は当たり前の話で、いまさらという感もある」といった意見が出ました。
 全地婦連からも、今日の説明で対策の努力内容が分ってよかったが、外部専門家の専門性・経歴の紹介もないままに、当然のように説明に入った点、マスコミが問題を大きく報じなかった場合、これほど早い改革はできなかったのではないか? との疑問、改革にあたって子どもたちの意見を聞いていない点などを指摘しました。
 そして事件発覚前の体制と改革後の体制の違いについて明らかにし、質的な面でどれだけ改善されたのか分かるように示してほしい。パートの方も単にお金を稼ぐだけでなく、誇りを持って働き、賢い消費者にもなれるような職場づくりを心がけてほしい。地域の中小企業経営者は視野が狭いという見方をされることもあるが、地域貢献も含めて、地域社会で尊敬されるフランチャイズ・オーナーを育成できる、そういう立派な企業として再生してほしいと、提案しました。

経済自由化に伴いEUは消費者団体強化支援を実施

 EUでは市場の拡大・経済の自由化と同時に、消費者被害の拡大が予想されたことから、「消費者政策に関する5カ年計画」を策定(02〜06年)、高水準の消費者保護(商品の安全性、不公正取引規制のためのルール化など)や、欧州消費者センターと民間消費者団体との連携を進めています。
 さらに政策決定において消費者団体が参画できるようにし、消費者教育の充実、消費者団体職員向けの訓練プログラムの開発などにより、消費者団体の能力強化・支援を行っています。
 日本でも消費者基本計画が策定され、各種の制度も整いつつあります。今後も、行政と消費者団体、企業が適切な緊張関係を保ちながら協力し合い、公正な市場を作っていく必要があります。
 
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